街の風になる……樹木葬の想い

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 台東区に住んでいるKさんは団塊の世代に生まれ定年を迎えた。仕事一筋に来た人生、仕事をリタイアして、急に自由な時間が増えた。そんな折、昔仕事で世話になった先輩に会いたくなり電話をかけた。電話に出た奥さんから「主人は昨年無くなりました」との声、思いもよらぬ話に言葉を失ったが、気を取り直してお墓参りに行きたい旨を話した。すると奥さんから「主人は山の木の下にいます」とのこと、先輩は確か東京の生まれのはず、家も都内なのにと不思議に思いながら住所を聞いた。5月の連休、小旅行を兼ねて先輩のお墓参りに出かけた。お寺の住職に案内されたのは、墓石が一つもない緑の丘。若葉が芽を出した小さな木の下の石のプレートに懐かしい先輩の名前を見つけた。優しく吹き抜けた春風の中にふと、懐かしい先輩の声が聞こえてきたような気がした。家に戻り、報告の電話かけた。「お前も死んだらここに来い、二人で野を走る風になろう」先輩は亡くなる前、奥さんにそう伝えたそうだ。電話を終え、kさんは、「子供の無い自分たちにも同じことだ」「俺は街の風になるかな」とつぶやいた。それを聞いていた奥さんが「そうですね」とほほ笑んだ。


この世に生を享け 大地に暮らし 自然に還る 

             個人完結という思ひ

 自然に還るということ

 

地球上の生物は、自らが生きていくために植物や動物を食べています。食べられた動植物は食べたものの血となり肉となります。そのようにして地球上の生物は循環しているのです。人間も地球上の生物で決して例外ではありません。この、死んだ後に自然に還るという現実を注目しているのが樹木葬です。
樹木葬での埋葬は火葬後の遺骨です。多くの樹木葬では、遺骨は土に還れるように埋葬されます。それは大地に還るということです。

 


 個人完結という概念

 

樹木葬は、永代供養のひとつとして考えられています。基本的に継承は不必要となっています。そのため、子供がいない方が亡くなった後の埋葬方法として選択する場合や、子孫にお墓管理の負担をかけたくないという方に選ばれています。もちろん継承することができる樹木葬もあるため、絶対に継承してはいけないということではありません。

 


 宗教、思想、ライフスタイルを問わない

 

樹木葬は宗教、思想、ライフスタイルを問いません。どんな宗教、思想、ライフスタイルを信じる人にも開かれている埋葬方法です。樹木葬は、比較的新しい埋葬法ですので、古くからある宗教的な枠組みに収まらないのです。樹木葬は基本的に個人完結型ですが、寺院の敷地内にある樹木葬施設に埋葬された場合、そのお寺の檀家となることがあります。生前によく調べることが肝要です。